「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)って聞いたことあるけど、うちの子に関係あるの?」そんな疑問を抱えている飼い主さんも多いと思います。
SFTSはマダニが媒介するウイルス感染症で、人にも犬猫にも感染する人獣共通感染症(ズーノーシス)です。
しかも、犬では致死率40%、猫では60%とも言われており、重症化すると命に関わることも。
この記事では、獣医師の視点から「SFTSとはなにか?」「どんな症状が出るのか?」「どうすれば予防できるのか?」を、わかりやすく解説します。
SFTSってなに?特徴と感染リスク
SFTS(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)は、SFTSウイルスによる感染症です。
主にマダニが感染源になりますが、実はそれだけではありません。
犬猫から人にも感染する!
近年、犬や猫を介して人に感染した例も報告されており、人獣共通感染症(ズーノーシス)として問題視されています。
さらに怖いのは、感染した犬や猫の体液・排泄物・嘔吐物などに触れることで、直接感染するケースもあること。
つまり、マダニの吸血だけが感染経路ではないのです。
なぜ今SFTSが広がっているの?
実はここ数年で、SFTSの報告件数は増加傾向にあります。その背景には、気候変動によるマダニの分布拡大が関係しています。
温暖化で野生動物とマダニが北上
以前は西日本の一部地域に限られていたマダニですが、ここ10年で西日本全体の半数以上の地域に分布が拡大しました。
これは野生動物の生息域が北上していることも関係しており、今後さらに感染リスクが高まると考えられています。
人の死亡例も報告されている
国のデータによると、人でのSFTS感染による死亡例も報告されています。
とくに西日本では、複数の地域で届け出があり、今後全国的な広がりも懸念されています。
出典:国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイトホームページ
どんな症状が出るの?犬・猫・人それぞれのサイン
犬や猫に見られる症状
SFTSに感染すると、犬では約40%、猫では約70%が重症化し、死亡してしまうケースもあります。
症状としては以下のようなものが見られます。
- 高熱(39℃以上)
- 食欲不振
- 白血球・血小板の減少
- 自力でご飯を食べられない(自力採餌困難)
- 下痢や嘔吐、元気がない
マダニを見つけたら?「無理に取らない」が基本!
「マダニがついていたんですが、どうすればいいですか?」というお電話をよくいただきます。
そのとき、必ずお伝えしているのが
「無理に取ろうとしないでください」ということ。
マダニは吸血中、口を皮膚にがっちり固定しているため、無理やり引っ張ると口の部分だけが皮膚に残ってしまい、化膿や炎症の原因になることがあります。
➡️ マダニを見つけたら、できるだけ触らず、動物病院で診てもらいましょう。
なお、SFTSは感染してすぐに症状が出るとは限らないため、「元気がない」「ご飯を食べない」など、少しでもおかしい様子があれば、様子を見ずに早めにかかりつけの動物病院で診てもらいましょう。
人に見られる症状
- 発熱
- 食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状
- 頭痛、筋肉痛、意識障害、リンパ節の腫れ など
参考:厚生労働省HP 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A
どうやって予防する?一番の対策は“予防薬”
SFTSの治療法は、現時点では対症療法のみ。
だからこそ、「感染しないように予防すること」がもっとも大切です。
マダニの予防についての詳細はこちらの記事をご覧ください→[室内飼いでも必要?獣医師が教えるノミ・ダニ予防のポイント]
犬・猫へのマダニ予防薬を忘れずに!
- 室内飼いの猫でも油断できません
→ 飼い主の衣類や荷物にマダニがついて持ち込まれるケースがあります。 - 散歩にあまり行かない犬でも予防は必要
→ 草むらや公園でも感染リスクがあります。
僕も臨床現場で
「外に出ていないはずの猫にノミやマダニがついていた」
という例をみたことがあります。
特に犬と猫を両方飼っている飼い主さんは要注意!なぜなら散歩から帰ってきた犬にマダニがついているかもしれないからです。
人もできる対策を
- 草むらや山などに出かける際は、長袖・長ズボンで肌の露出を減らす
- 帰宅後はシャワーで洗い流す、着替える
- ペットと一緒に遊んだあとは、手を洗うなどしましょう。
- 特に顔や傷口を舐められたり噛まれたりするとそこから感染する恐れもあります。顔を舐められたりした場合は口をゆすぐなどしましょう。
まとめ|SFTSから人も動物も守るための3ポイント
SFTSは、人にも犬猫にも感染する重大な感染症です。
しかも、致死率が高く、気づいたときには重症化していることもあります。
だからこそ、
- 予防薬で犬猫をマダニから守る
- 草むらや野外では人もマダニ対策をする
- 怪しい症状が出たら、すぐに動物病院・医療機関に相談する
この3つを意識して、愛犬・愛猫と安心して暮らしていきましょう。
このブログでは、「人と動物が健康で幸せな社会をつくる」という夢のもと、飼い主さんとペットの暮らしに役立つ情報を発信しています。
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